オフセ オフセット印刷とは?初心者でもわかる基礎知識からプロの選び方まで
オフセット印刷について詳しく知りたいとお考えではありませんか?本記事では、印刷物の発注を検討されている方に向けて、オフセット印刷の基礎知識から選び方、さらにはオンデマンド印刷との比較まで徹底解説します。印刷方法の選択に迷っている方、コスト効率の良い印刷方法を探している方、高品質な印刷物を作りたい方に必ず役立つ内容となっています。それでは早速、オフセット印刷の世界をご案内していきましょう。
オフセット印刷とは?その仕組みと特徴
オフセット印刷とは、平版印刷の一種で、版(プレート)に付けたインクを一度ゴム製のブランケットに転写(オフセット)してから紙に印刷する方式です。現在、商業印刷の主流となっている技術で、その名前の由来は英語の「offset(転写する)」から来ています。
オフセット印刷の基本原理
オフセット印刷の基本原理は、「水と油は混ざらない」という性質を利用しています。印刷版上では、画線部(印刷したい部分)と非画線部(印刷しない部分)があり、画線部は油性のインクが付着しやすく、非画線部は水が付着しやすくなっています。
印刷の工程は以下のように進みます:
- 版の非画線部に水分(湿し水)を付ける
- 版の画線部にインクを付ける(非画線部は水分があるためインクが弾かれる)
- 版からゴムブランケットにインクを転写(オフセット)する
- ゴムブランケットから紙にインクを転写する
この間接的な転写方式により、版の寿命が延び、さまざまな紙質への対応が可能になっています。
オフセット印刷機の種類
オフセット印刷機は大きく分けて以下の種類があります:
- 枚葉機(まいようき):一枚ずつ用紙を送り込む印刷機。多品種少量生産に向いています。
- 輪転機(りんてんき):ロール状の用紙を連続して印刷する機械。大量生産に向いています。
- UVオフセット印刷機:紫外線(UV)で瞬時にインクを硬化させる印刷機。乾燥時間を短縮でき、光沢のある仕上がりが特徴です。
印刷部数や納期、仕上がりの質感によって、最適な印刷機が選ばれます。
オフセット印刷のメリット・デメリット
メリット
- 高い印刷品質:色再現性に優れ、鮮明な印刷が可能です。特に写真や細かい文字、グラデーションなどの表現に強みがあります。
- 大量印刷時のコスト効率:初期設定費用は高いものの、印刷枚数が増えるほど1枚あたりのコストが下がります。一般的に300部以上になると、デジタル印刷よりもコスト効率が良くなることが多いです。
- 用紙の選択肢が豊富:さまざまな種類、厚さ、質感の用紙に対応可能です。特殊紙やコート紙、厚紙など、幅広い素材に印刷できます。
- 特色印刷に対応:企業カラーや金・銀などの特殊インク(特色)を使用した印刷が可能です。パントン指定色などの色再現性の高さは他の印刷方法では難しいレベルです。
- 耐久性と安定性:印刷された色が長期間安定しており、退色しにくいという特徴があります。重要な記録文書などに適しています。
デメリット
- 初期費用が高い:版の作成費用がかかるため、少量印刷では割高になります。一般的に、300部未満の印刷では他の印刷方法を検討した方がコスト効率が良いでしょう。
- 納期が比較的長い:版の作成や印刷機のセッティングに時間がかかります。急ぎの印刷には不向きな場合があります。通常、オフセット印刷の場合、発注から納品まで5〜7営業日程度必要です。
- 小ロットでの印刷に不向き:前述の通り、少量印刷では1枚あたりのコストが高くなります。カタログやパンフレットなど少部数での印刷物には不向きです。
- データ修正の柔軟性が低い:一度版を作成すると、修正の際には再度版を作り直す必要があります。これにより追加コストが発生します。
- 環境負荷:インクや洗浄剤に含まれる有機溶剤など、環境への負荷が比較的大きいという課題があります。近年は環境に配慮したインクの開発も進んでいます。
オフセット印刷とデジタル印刷の比較
印刷方法を選ぶ際、オフセット印刷とデジタル印刷のどちらが適しているか迷うことも多いでしょう。ここでは両者の違いを詳しく比較します。
印刷方式の違い
- オフセット印刷:前述の通り、版を使用し、水と油の反発作用を利用した間接印刷方式です。
- デジタル印刷:パソコンのデータを直接印刷機に送信し、トナーや液体インクを使って印刷します。版が不要なため、バリアブル印刷(一枚ごとに内容を変える印刷)なども可能です。
コスト比較
印刷部数 | オフセット印刷 | デジタル印刷 |
---|---|---|
100部未満 | 高コスト | 低コスト |
100〜300部 | やや高コスト | やや低コスト |
300〜1000部 | 中程度 | 中程度 |
1000部以上 | 低コスト | 高コスト |
一般的に、300部を境にコスト効率が逆転する傾向がありますが、印刷物のサイズや使用する紙質、インクの種類などによっても変わります。
品質比較
- 色の再現性:オフセット印刷は色の再現性に優れており、特にパントンカラーなどの特色印刷において強みを発揮します。デジタル印刷は技術の向上により品質差は縮まっていますが、細かいグラデーションや特色においてはまだオフセット印刷に一日の長があります。
- 印刷の安定性:オフセット印刷は大量印刷においても安定した品質を維持できます。デジタル印刷は印刷機の種類や状態によって多少のばらつきが生じることがあります。
- 表現の幅:特殊なインクや加工においては、オフセット印刷の方が表現の幅が広いです。金・銀インクなどの特殊インクや、特殊な用紙への対応力が高いのが特徴です。
納期の比較
- オフセット印刷:版の作成や印刷機のセッティングに時間がかかるため、通常5〜7営業日程度必要です。
- デジタル印刷:版が不要で、データを直接印刷できるため、短納期(最短で当日〜翌日)対応が可能です。
環境への影響
- オフセット印刷:従来のオフセット印刷は、インクや洗浄剤に有機溶剤を使用するため、環境負荷が比較的高いとされていました。現在は環境に配慮したベジタブルインクの使用なども進んでいます。
- デジタル印刷:版を使用しないため、資源の無駄が少なく、比較的環境に優しい印刷方法と言われています。ただし、トナーの製造過程や廃棄時の環境負荷という観点では課題もあります。
オフセット印刷に適した印刷物
オフセット印刷は、その特性から特に以下のような印刷物に適しています。
大量部数の印刷物
- 会社案内・製品カタログ:1000部以上の発注では、オフセット印刷がコスト効率に優れています。特に高品質な写真や図版が含まれる場合は、オフセット印刷の色再現性が活きます。
- 書籍・雑誌:大量印刷される書籍や雑誌は、コスト効率と印刷品質の観点からオフセット印刷が選ばれることが多いです。日本の出版物の約70%はオフセット印刷で製作されています。
- チラシ・フライヤー:大量配布用のチラシやフライヤーは、部数が多くなればなるほどオフセット印刷のコストメリットが大きくなります。
高品質が求められる印刷物
- ブランドカタログ:高級ブランドや美術品のカタログなど、色の正確さや質感の再現が重視される印刷物には、オフセット印刷が選ばれます。
- アートブック・写真集:繊細な色調やグラデーションの表現が必要な芸術作品の複製や写真集では、オフセット印刷の高い色再現性が重要です。
- 企業パンフレット:企業イメージを左右する重要なツールであるパンフレットでは、ブランドカラーの正確な再現や高級感のある仕上がりが求められるため、オフセット印刷が選ばれることが多いです。
特殊加工が必要な印刷物
- 特色を使用した印刷物:企業ロゴなど、特定の色を正確に再現する必要がある場合や、金・銀などの特殊インクを使用する場合には、オフセット印刷が適しています。
- 高級感のある印刷物:箔押しやエンボス加工など特殊加工と組み合わせる場合、オフセット印刷との相性が良いです。
- 特殊用紙への印刷:和紙や厚紙、テクスチャーのある用紙など、特殊な用紙への印刷にはオフセット印刷の汎用性が活かされます。
オンデマンド印刷とは:最新トレンドと活用法
オンデマンド印刷の基本概念
オンデマンド印刷とは、必要なときに必要な分だけ印刷する方式を指します。従来の印刷では、コスト効率を考えると大量に印刷する必要がありましたが、オンデマンド印刷では少量からでも経済的に印刷することが可能です。
主にデジタル印刷技術を使用し、データから直接印刷するため版が不要で、印刷の準備時間が短縮されます。これにより、短納期かつ少量印刷のニーズに応えることができるのが特徴です。
オンデマンド印刷のメリット
- 少量印刷でも経済的:必要な分だけ印刷できるため、在庫を持つ必要がなく、廃棄ロスを減らせます。特に100部未満の印刷では、オフセット印刷よりも大幅にコスト削減できる場合があります。
- 短納期対応が可能:版の作成が不要なため、最短で当日〜翌日での納品も可能です。急な資料や販促物が必要になった場合でも対応できます。
- バリアブル印刷が可能:一枚ごとに内容を変えるバリアブル印刷が可能です。例えば、宛名や会員番号などの個人情報を印刷物ごとに変えることができます。DMなどで効果的に活用できます。
- 小ロットでの試作に最適:新商品のパッケージなど、デザインの試作段階では少量だけ印刷して確認したいケースがあります。オンデマンド印刷ならば、そうした試作用途にも経済的に対応できます。
- データの更新が容易:デジタルデータをそのまま印刷するため、情報の更新やデザイン変更が容易です。必要に応じて最新情報に更新した印刷物を小ロットで発注できます。
オンデマンド印刷の活用事例
- イベント向け印刷物:展示会やセミナーなど、イベントごとにカスタマイズした資料やパンフレットを、必要な分だけ短期間で印刷できます。
- 季節限定商品のパッケージ:期間限定商品など、短期間しか使用しないパッケージは、大量印刷すると無駄が生じる可能性があります。オンデマンド印刷なら必要な分だけ印刷できます。
- 地域限定のチラシやポスター:エリアごとに内容を変えたチラシやポスターを、必要な分だけ印刷することが可能です。これにより、よりターゲットに特化した訴求ができます。
- サンプル品やプロトタイプ:新製品の開発段階で、パッケージやラベルのサンプルを少量だけ作成するのに適しています。
ME-Qとラクスルによるオンデマンド印刷サービスの比較
ME-Qとは
ME-Qは、オリジナルグッズ製作のためのオンデマンド印刷サービスです。Tシャツやトートバッグなどのアパレル製品から、マグカップやスマホケースなどの雑貨まで、幅広いアイテムにオリジナルデザインを印刷することができます。
ME-Qの特徴:
- 1点からの注文が可能:サンプル作成や個人利用にも対応しています。
- 豊富なアイテム数:200種類以上のアイテムに対応しており、ファッションアイテムから雑貨まで幅広く取り揃えています。
- 高品質な印刷技術:最新のデジタル印刷技術により、フルカラーの写真や細かいイラストも鮮明に再現できます。
- 簡単なオンライン発注:ウェブ上でデザインのアップロードから注文までが完結するため、専門知識がなくても簡単に発注できます。



ラクスルとは
ラクスルは、印刷物のオンライン発注サービスとして知られており、名刺やチラシ、パンフレットなどの印刷物からTシャツなどのオリジナルグッズまで、幅広い印刷サービスを提供しています。
ラクスルの特徴:
- 低価格:従来の印刷業界の流通構造を見直し、中間マージンを削減することで低価格を実現しています。
- 豊富な印刷物の種類:ビジネス向けの名刺やパンフレットから、ノベルティグッズまで多様な印刷サービスを提供しています。
- オンライン完結型:デザインのアップロードから注文、入金までをオンラインで完結できるため、時間と手間を節約できます。
- デザインテンプレート:デザインの知識がなくても利用できる豊富なテンプレートを用意しています。
- データチェックサービス:印刷トラブルを防ぐため、入稿データのチェックサービスを無料で提供しています。



ME-Qとラクスルのサービス比較
サービス項目 | ME-Q | ラクスル |
---|---|---|
最小注文数 | 1点から | 商品により異なる(名刺100枚~など) |
対応商品 | アパレル、雑貨を中心に200種類以上 | ビジネス印刷物からノベルティまで幅広く対応 |
価格帯 | やや高め(高品質志向) | 低価格(コスト重視) |
納期 | 標準7〜10営業日、最短3営業日 | 商品により異なる(最短翌日~) |
特徴 | オリジナルグッズ作成に特化 | 総合的な印刷サービス |
どのような場合にME-Qが適しているか
- 高品質なオリジナルグッズを作りたい場合:ME-Qは印刷品質に定評があり、細かいデザインや写真の再現性に優れています。
- 少量多品種のグッズを作りたい場合:1点からの注文に対応しているため、様々なデザインバリエーションを試したり、個別にカスタマイズしたグッズを作成したりする場合に適しています。
- 企業ノベルティやイベントグッズとして:展示会やイベントでのノベルティ、企業ギフトなど、品質にこだわったオリジナルグッズを制作する際に最適です。
- アパレルブランドのサンプル作成:新しいアパレルブランドの立ち上げ時や、デザインのサンプル作成など、少量からの高品質な印刷が必要な場合に適しています。
どのような場合にラクスルが適しているか
- コスト重視の場合:低価格でのサービス提供を重視する場合、ラクスルの方が適している場合が多いです。
- ビジネス印刷物が中心の場合:名刺、チラシ、パンフレットなどのビジネス向け印刷物が中心の場合は、ラクスルの総合的なサービスが便利です。
- 短納期が最優先の場合:一部の商品では最短翌日出荷に対応しているため、急ぎの印刷物が必要な場合はラクスルが適しています。
- 印刷物の種類が多い場合:一度に様々な種類の印刷物(名刺、パンフレット、ポスターなど)を発注する場合、ラクスルのワンストップサービスが便利です。
オフセット印刷からオンデマンド印刷への移行トレンド
ビジネス環境の変化とその影響
近年、ビジネス環境の急速な変化に伴い、印刷業界でもオフセット印刷からオンデマンド印刷へのシフトが進んでいます。この背景には以下のような要因があります:
- 情報のデジタル化と更新頻度の高まり:デジタル技術の進化により、情報の更新サイクルが短くなっています。カタログやパンフレットなども頻繁に更新する必要があり、大量印刷して在庫を持つリスクが高まっています。
- 多品種少量生産の需要増加:マーケティングの細分化により、ターゲットに合わせた多様な印刷物が求められるようになりました。一種類を大量に印刷するよりも、複数種類を少量ずつ印刷するニーズが増えています。
- 環境意識の高まり:SDGsへの取り組みなど、環境負荷低減への意識が高まる中、必要な分だけ印刷してロスを減らすオンデマンド印刷への注目が高まっています。日本の印刷業界では、年間約16万トンの紙が余剰印刷物として廃棄されているというデータもあります。
データに基づく印刷方法の選択
印刷方法の選択においては、以下のようなデータを参考にすると良いでしょう:
- 部数別コスト比較:一般的に300部を境にコスト効率が逆転すると言われていますが、印刷物のサイズや仕様によって変わります。実際の見積もりを比較検討することをおすすめします。
- 在庫コストの考慮:大量印刷して保管する場合、保管スペースのコストや在庫管理の手間も考慮する必要があります。1㎡あたりの月間保管コストは都市部では約1,000円~3,000円程度かかります。
- 廃棄ロスの計算:従来のオフセット印刷では、印刷物の約10〜15%が余剰として廃棄されるというデータがあります。この廃棄コストも総コストに含めて考える必要があります。
ハイブリッドアプローチの検討
多くの企業では、オフセット印刷とオンデマンド印刷を使い分ける「ハイブリッドアプローチ」が効果的です:
- 基本部分はオフセット印刷:変更の少ない基本情報や定番商品のカタログなど、長期間使用する印刷物はオフセット印刷で大量生産。
- 変動部分はオンデマンド印刷:価格表や仕様書など、頻繁に更新が必要な部分はオンデマンド印刷で少量多頻度に生産。
- 地域別・顧客別カスタマイズ:基本デザインはそのままに、地域や顧客ごとにカスタマイズが必要な部分はバリアブル印刷を活用。
このようなハイブリッドアプローチにより、コスト効率と柔軟性の両立が可能になります。
オフセット印刷物の発注ガイド
印刷会社の選び方
印刷会社を選ぶ際のポイントは以下の通りです:
- 実績と評判:過去の印刷物のサンプルを確認したり、口コミや評判をチェックしたりして、品質の安定した印刷会社を選びましょう。
- 得意分野の確認:書籍、パッケージ、大判ポスターなど、印刷会社によって得意分野が異なります。自分の印刷物に合った専門性を持つ会社を選ぶことが重要です。
- サポート体制:特に印刷初心者の場合、データ作成のアドバイスや校正のサポートがある会社を選ぶと安心です。
- 価格と納期:複数の印刷会社から見積もりを取り、価格と納期のバランスを比較検討しましょう。最安値だけで判断せず、品質とサービスも重視することが大切です。
- 環境への取り組み:FSC認証紙の使用やベジタブルインクの採用など、環境に配慮した取り組みを行っている印刷会社を選ぶことも一つの基準になります。
データ入稿のポイント
印刷データを入稿する際のポイントは以下の通りです:
- ファイル形式:一般的にはPDFでの入稿が推奨されています。Illustrator、Photoshopなどのデータで入稿する場合は、印刷会社の指定に従いましょう。
- 解像度:写真や画像は350dpi以上の解像度が必要です。特に拡大印刷する場合は注意が必要です。
- カラーモード:印刷用のCMYKカラーモードに変換しておきましょう。RGBモードのままだと色味が大きく変わる可能性があります。
- フォント:フォントはアウトライン化するか、フォントデータを同梱するかを印刷会社と相談しましょう。
- トンボとトリムマーク:断裁位置を示すトンボやトリムマークを設定し、適切な塗り足し(ブリード)を設けることが重要です。一般的には3mm程度の塗り足しが必要です。
校正のチェックポイント
校正を確認する際のポイントは以下の通りです:
- 色味の確認:特に企業ロゴなど、色の正確さが重要な要素は慎重にチェックしましょう。必要に応じてカラープルーフを依頼することも検討しましょう。
- 文字の誤字脱字:特に重要な情報(会社名、連絡先、商品名など)は複数人でチェックすることをおすすめします。
- 画像の解像度:低解像度で粗く印刷されていないか確認しましょう。特に拡大された写真は注意が必要です。
- レイアウトのずれ:断裁後のレイアウトを想定して、重要な要素が切れていないか確認しましょう。
- 特殊加工部分:箔押しやエンボスなどの特殊加工がある場合、その位置と効果を確認しましょう。